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照明とCGを軽やかに行き来する「光のプロ」/MIKOSHI
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事業のこと

照明とCGを軽やかに行き来する「光のプロ」/MIKOSHI

ハッチを構成するチームにも数あれど、カバーする領域が「光」という点でユニークなのがMIKOSHI。実写における照明に始まり、デジタルのグラフィックが本格化し始めると今度はバーチャル世界のビジュアル表現をも手がけるようになって現在に至っています。

照明とCG。イメージ的に一見結びつかない二つの専門領域を自在に横断できるそのワケを探りたく、代表の森下とチーフの幡野に話を聞きました。

車で培った、照明力。デジタル移行は、予見力

--ずばり、MIKOSHIは「車」のグラフィックが強い。好きが高じて?みたいに思ってしまいそうですけど、実際のところそれはどんな意味合いを持っているのでしょう。

森下

私自身がスタジオからキャリアをはじめたということが深く関わってまして、そこがちょっと変わった目の付けどころから興された会社だったんです。日本には、その国土の狭さの割に自動車メーカーが9社もある。車の撮影現場における照明を強い専門性を持ってやれれば、これはいいビジネスになるだろう、というニッチな視点ですね。日本の基幹産業と言ってよい世界ですから、今から半世紀ほども前に立ち上がって以降、景気とともにどんどん受注を増やし会社も大きくなっていったんですけど、そんな流れの中で僕も入社して働き始めました。

昔、撮影の世界でよく言われていたのが「車ができればなんでもできる」ということ。ガワの部分は鉄板、窓はガラス、タイヤはゴムという風にさまざまな材質を扱うし、席に乗る人についてもカバーしなくちゃいけない。おまけに被写体が動くことも、ということでそういったポイントをクリアしていく中でおのずと総合的な力量が求められるんですね。そんな中、スタジオには10年在籍しました。途中、コマーシャルの制作会社に一年出向していた関係で、グラフィックだけでなく映像分野での照明スキルが身につく機会にも恵まれたり。

のちフリーになり、少し時間が経ってから、かつての出向先で仲良くなったディレクターと意気投合して始めたのがMIKOSHI。照明&ディレクターという変わったコンビではあったけれど、相方がディレクションする案件に僕が照明として加わったり、さらにディレクションよりもっと広く、プロデューサーとして案件全体を取り仕切るような展開にもなったり。二人三脚です。

ーーそれが2000年代前半の頃、ということはこの時すでにグラフィックや映像におけるデジタル化の波を目の当たりにしていたはずですよね。

森下

店頭用ビデオ、街頭ビジョン、電車の車内ディスプレイなどが目に見えて増え出した頃です。街のいろんなところでデジタルデータのグラフィックや映像を流す装置が登場して、みんな携帯で気軽に写真を撮るようになった。グラフィックの世界もまたフィルムからデジタルへの移行期で、フィルムだと写植で切り貼りするしかできなかった加工が、デジタルになるとフォトショップで際限なく色々できるようになっていきましたから。

「こんな便利なものを世の人が放っておくはずがない」ということで、デジタル分野の最新機材などは費用を惜しまず積極的に導入し、使いこなせるよう勉強しました。今がまさに転換期なんだからという自覚は人一倍強かった。世の中の流れもこれまでの十倍は速く、使っているカメラだって一気に変わるぞ、と。

そんな風にして、世間がトレンドとして注目するようになる四、五年前からMIKOSHIはチーム全体としてその辺りに詳しくなっていたと言ってよいと思います。

フォトリアルと実写ノウハウの相乗効果

ーー実写の照明における腕前がどうしてCGに反映されるのかと不思議でしたが、来るべき未来を見越し、新たな能力開発に励んでいたのが大きかったんですね。

幡野

いち早くツールに精通できたのも理由ではあるけれど、時代と共にいわゆる“フォトリアル”な表現が可能になっていったというのもポイントなんですよね。画素数もどんどん増えていきましたし、光反射の計算もどんどん現実に近くなってきているし。

私がほぼ全くのゼロからCGをやるようになってからのこの7年間でも、実写での照明知識・技術が、デスクトップ上でものすごく精度高く表現できるようになりました。今だと、CADデータを出力したものを見て、それが撮ったものなのかCGなのかちょっと判別がつかないくらいリアル。ということは逆に、現実世界での照明技術がないと本当に良い質感やフォルムが作れないということでもあるんです。

車のカタログやポスターをメインに普段やっているわけですが、作業の本質はあくまで現場でやるライティングをCGの中でいかに再現するか、なんです。雰囲気としての格好良さもまたあるんですけど、まずは、現実世界での照明のノウハウに基づいて、ゴムなり鉄板なりの質感的な「正しさ」を追求しています。

ーー熟達した人にとってはそこにもはや境はない、みたいな感じでしょうか。

幡野

僕自身でいうと今や9割がCG作業、1割が現場での実写撮影という比率なんですが、現場に出る前にCGで事前シミュレーションすることもあります。同じシチュエーションを擬似的に作って試すというもので、まさに双方の経験のフィードバック、ですよね。

森下

CGで済ませることが時代を追うごとに増えれば、現場に出る機会は逆に必然的に減っていくことだし「今行けるうちに、たくさん行っておこう」と経験の浅いメンバー達にはよく伝えています。被写体に光が当たった様子を直に見て感覚として覚えるのはとても大切なことなので。純粋に、被写体がきれいになっていくこと自体が嬉しいですから、僕たち。

幡野

見えるということは、光がそこに当たっているということ。それも単に明るければ良いというのではなくて被写体の持つ形なり質感なりがちゃんと出ている必要があります。照明が絵づくりに与える影響は、実は大きいんです。もらった企画を読んで、その趣旨から一体どんなモードの、どんな雰囲気の光を作るべきか。その点を色々思い巡らしながらトライして、結果よく写れば「あぁ良かったな」と。

これからの歩みについて

ーー自動車業界では紙のカタログを廃止する動きも見られたり、MIKOSHIを取り巻く状況はこれからも何かしら変化は起こっていくものと思いますが、それへのリアクションも含めて、今後の展望について教えてください。

森下

カタログがWeb単独で存在するとなると、コンテンツのあり方が根本から変わって、操作して見たい角度から見られるようになったり、動画ばかりになったりするかも知れない。そういったユーザー体験を可能にする新しいソフトの導入や研究はもとより、僕らとしては例えばSwimmyやWeとコラボして、コンテンツの在り方自体を提案するなどの可能性も探ってみたいと思っています。

幡野

去年オフィスを引っ越した関係でいまWeとは同じフロアですしね。この距離の近さで聞こえてくる会話ひとつでも刺激がもらえたりして、日常的な部分から協働の機会を探れる環境になったし、ハッチグループとしての規模の強みを活かすということはこれからの時代、もっと意識的でいないとな、と思っています。車の照明を強みとしつつ、それとはまた別領域の芽を大きく伸ばす上でのヒントもひょんなことから見つかるかもしれない。

森下

あと、白熱球からLEDへのシフトのことも。LEDを使うのでは、従来とはまた違った照明のノウハウが求められてくるから。それをどう駆使するか、というのがこれからの時代の照明のスタンダードになっていくわけですよ。

前々から言い続けてきたことですけど、あらゆる仕事について「受けた以上は、100%以上の力で」というのが僕の信条。色んな人とのつながりを大切にし、イマジネーションをいつも高めつつ、仕事していかなくちゃ。何事もあくまでポジティブに捉えたいなと思っています。

この記事の主役
MIKOSHIの紹介

「光」をプロデュースする

MIKOSHI

TVCMをはじめとした撮影照明の技術と経験を活かし、3DCG、レタッチ、空間照明など、実写からデジタルまで幅広い領域に精通する”光”のエキスパート・チーム。特殊領域である”クルマ”領域においてはカタログから映像まで一気通貫での制作が可能。

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