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仕事を世に出せてこそプロデューサー 〜プロデューサーのトリセツ(後編)〜
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仕事を世に出せてこそプロデューサー 〜プロデューサーのトリセツ(後編)〜

様々な肩書の仕事人が生息するクリエイティブ業界。必ずしもよく知られていないその肩書の実態を、当人たちの喜怒哀楽から紐解いていくのが本企画「カタガキのトリセツ」。三回目の今回はプロデューサーの姿に迫る。

登場するのはプロデュースやプランニングを通じ広告ほか分野問わずものづくりを主導する株式会社米(こめ)の代表・ヤマナカユウスケさん、VTuberのライブや映像等オンライン配信を企画段階から担う株式会社CAMBR(キャンバー)代表・飯寄雄麻さん、ドライブインシアターを軸とした体験型コンテンツや地域開発を手がけるDo it Theater代表・伊藤大地さん(株式会社HATCH)の三名。 OPEN MIC編集長・新井哲郎によるファシリテーションのもと、前編に続いてトークが繰り広げられた。

前編はこちら

「お蔵入り」は最悪の連鎖

新井

前編では「喜怒哀楽」の「喜」と「怒」のふたつを見てきましたが、今回はその続き。「哀」つまり哀しみから始めていくとしましょう。プロデューサーとしてこんなときこそ悲しいぞ、というのは伊藤さんだとどんな……?

伊藤

「無駄と隙間」が作り出せなかったときですかね。業界問わずコスパを追求する風潮が高まって、必要十分なものだけが求められるようになってきている昨今だとは思うんです。でも、あとあと振り返って面白いと思えるものって、往々にして隙間とか無駄をどこかしら含んだものなんですよね。僕はプランニングもやるんですけど、プランを書き上げる時もそこは意識しています。

新井

100パーセント自分が想定した通り、ではなくて。

伊藤

そう。いい意味で「予期せぬ部分」です。だから、そういう部分が結果として盛り込めなかったときはちょっと落ち込む。自分自身がマインド的にいっぱいいっぱいで、余裕持った設計ができなかったな、と反省したり。お客さんにも「余裕のなさ」はおのずと伝わってしまうと思うし。

ヤマナカ

確かに。ガチガチに決め込んだ座組みにしても、各自与えられた役割だけを全うしようとして掛け算の余地もなくなってしまいますよね。余白とか無駄があることで「あれ、ここ俺埋めようかな」「ここ踊ってもいいの?」みたいな化学反応も生まれるっていう。すげえ共感します。

伊藤

意外なあの人からの意見、めっちゃ良かったなぁとかですよね。カメラマンがディレクションの話をするようなことがあってもいいと僕は思っていて。それでクリエイティブの質が上がるのなら絶対プロデューサーとしては採用すべきだし、そういう余白があるものづくりをやりたいなと。

新井

じゃあ飯寄さん。

飯寄

僕は「作品がお蔵入り」してしまうのが悲しくて。

新井

確かに。満場一致モノの悲しさですね。

飯寄

制作費が振り込まれないよりも悲しいです。普段お付き合いするクリエイターたちは予算の多少の浮き沈みに関わらず毎回きちんと仕事に向き合ってくれる人ばかりなだけに、その成果物がナシってなるのが一番悲しいし、申し訳ないし、苦しくてやりきれない。時間が無駄になったことと、それ以上に、そこには未来につながるものが何もないのが本当にもう。

新井

この業界では寝てたことと一緒ですからね。

伊藤

実績として世に見せることも当然できないわけで、最悪の連鎖がすごい。

飯寄

予定の制作費の三倍払うんで許してくださいっていう話ではないですし。僕はこの手のアクシデントが極力発生しないよう予防線を張るのもプロデューサーの仕事だと思ってます。いついつまでに絶対やるかやらないか決めてくださいというようなコントロールを。

ヤマナカ

今年一番悲しかったの、僕はまさにソレでした。

新井

それは、なんともやるせない。ヤマナカさん、ご自身の哀しみについても教えてください。

ヤマナカ

広告案件の場合だと、あらゆることについて「失」うこと。失注しかり、他者との関係性しかり。失うっていうことは、制作をやる上ではとにかく避けないといけない。預かるお金も、戦略も、売るべきものも全て他社さんのものなので。逆に、自ら手がけるコンテンツ案件だと「想像しきれない」です。

新井

想像しきれない、というのはどういうことですかね?

ヤマナカ

怖さというか、怖さにちょっと似た悲しさというか。当たり前ですけど、広告という営みの歴史の長さって僕自身の歩みなんかよりずっと長いわけで、そういう中でどうしても、僕の想像でカバーしきれない展開が起こってしまう。未然にトラブルを防げなかったとか。そういう意味で時々すごく怖くなったりするんです。自分ダメダメだな、みたいな。

飯寄

なにか内なるものがって感じですか?

ヤマナカ

「なんで!もっとできたはずなのに!」みたいな後悔の念ですかね。僕、やっぱり無知ではいけないと思ってるんです。無知であることで人を傷つけてしまうようでは社会を渡り歩いてはいけないって。

新井

起こりかねない未来のトラブルのこと。クライアントからの期待のこと。想像するべき対象や範囲も数多いですよね。

ヤマナカ

そう。あとはスポンサーがいる・いないによってみんなの期待値も違ってきますし。

新井

なるほど。いやしかし、皆さんストイック過ぎませんか?そんな武士みたいな人たちでしたか。一様に意識が高過ぎる。

ヤマナカ

言われてみれば、確かに……。単に会話として気軽にしゃべるんじゃなくて、今みたいにフリップに書いてってなることでワードチョイスも多分違ってくるのかな。言語化しフリップに定着させて、中身を口頭で話している分、ちょっと意識高い系になるかもしれないですよね。

新井

そのせいか毎度、ふと気が付くと皆さん自然とろくろを回してるんですよね(笑)。

深夜に一人で企画づくり。チームで予想外の企画会議。やっぱり企てるのが楽しい。

新井

では最後に四つ目の「楽」しい話へ。プロデューサーとしての皆さんが思う、楽しいこととは?

ヤマナカ

僕は「企画」。

飯寄

同じです。僕も「チームメンバーと企画書をつくっている時」。

新井

二人とも、企てる瞬間ってことですよね。

ヤマナカ

そうです。僕は企画を練っているときもそうだし、無事通ってお買い上げとなったときももちろん嬉しい。広告案件でもコンテンツ案件でもそこは同じで「この企画いいね」とか「うわ、この企画嫉妬するわ」みたいなことを言ってもらえるのは純粋に嬉しい。

飯寄

企画を考えてるときだけはもう、何やっても自由ですからね。妄想の風呂敷はそれこそめいっぱい広げておいて。チューニングをその後でやればOKなわけなので。ところで思ったんですけど、みなさん企画書をつくるときっていつも何時ぐらいに取り組んでます?

ヤマナカ

深夜しかやらないですね。みんなでやるブレストは日中にしますけど。

伊藤

ですよね。僕も深夜です。

飯寄

それはやっぱり日中の電話とかを避けて?

ヤマナカ

そうそう。打ち合わせがあったりすると「潜る」ことができないんですよね。

新井

「潜る」……!

伊藤

深夜や早朝っていう人、結構多いんじゃないですかね。

飯寄

僕も基本的にはそうなんですが、最近、多人数で考えるようなこともやり始めています。研修っぽくみんなで集って長時間、集中的にコンペのように企画案を出し合うっていう。それが、すごい良かったんですよ。一人で夜な夜な考えるのも、もちろんアリなんですけど。互いに持ち寄って壁打ちするっていうのが自分だけでは生み出せない企画になったりして、いま個人的に面白いです。思いもしなかったこんな案にオッケー出しちゃった自分にもワクワクしたり。

新井

ご自身では気づかないでしょうけどいま、飯寄さんが今日一番の笑顔を。でもそうですね。やっぱり企画って、世の中のモラル的にちょっとこれはみたいなことも思いめぐらせたりできて、夢いっぱいですからね。さて、そんな二人に対して伊藤さんは?

伊藤

うん、二人の意見にもかなり頷きつつなんですけど、自分が書いたのは「予想外の展開」ですね。意味合い的に重なる話があったばかりですけど。本質的に共通してますよね。チームとして揉んでいく過程で自分の当初の考えとは全然違う展開になって、むしろそれがいい感じに膨らんでいくとか。偶発的なことをあえて起こそうとする自分もいるし。知らない店に飛び込む、みたいな。

ヤマナカ

分かります。帰り道を変えてみる、とか。

飯寄

そういう時って、予想外の展開を受け入れられた自分に成長を感じません?普通だと予想外のことに慌てそうなところを「ああ、いいんじゃない?」と受け止めることができたときってだいぶレンジが広がったなって。

ヤマナカ

許容できてる分、大人になったなと。

新井

プロデューサーという企画の“目利き”として、死ぬほどたくさんの企画を見てきた経験値から「大体こんな範囲に収まるだろう」と見当をつけているレンジがまずあって、そこへ思わぬ角度からハッピーな予想外が飛んできた、みたいな感じですよね。そういうときって大体みんなニヤニヤしてますよね。「そう来たか」っていう。

伊藤

相手側から、これまで通りにやっていては不可能なことをオーダーされた場合も、同じようにちょっとワクワクしますね。予想段階じゃまだわかんないけど、でもやってみようと思えてきて。

ヤマナカ

一見どうやるの?みたいなやつですね。すごい分かります。

新井

チャレンジングですね。もうクライアント側からしたら「プロデューサーには、斜め上のことを言ってみよう」という合意形成が作られかねない(笑)。

飯寄

僕もだんだん思い出してきました。テクニカルディレクターだった二十代の頃、何事も最短で済ませることばっかり考えていて。クライアントに対し、良かれと思ってゴールの部分を先まわりして見せ過ぎちゃってたんですよね。あるときプロデューサーから「夢見させるのも仕事だから」って言われて、そこではじめて「ああ……!」と。

新井

大事、ということなんですね、そこ。えー、ではではこの楽しい雰囲気のまままとめに入りましょう。まず「喜」については「打ち上げ」。「怒」は、「仲間をナメられた!」。「哀」は、ただ一文字「失」でいけてしまいそうですよね。そして「楽」はというと「企画と予想外」。

伊藤

できた。こうしてまとめたのを見ると、なるほどなって思いますね。

飯寄

「打ち上げ!」「仲間をナメられた!」だけが目に入ると、なんだかパリピみたいなヤンキーみたいな(笑)。

新井

ではこれにてプロデューサーのトリセツ、完成です。いろんな話をしてきましたけど、一言でまとめると、この後みんなで打ち上げをして喜んで帰りましょうということで(笑)。皆さん、今日はどうもありがとうございました。

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所属や肩書きにとらわれることなく、クライアントとクリエイターが肩を並べて協業ができる「つくり手」のための会員制クリエイティブコミュニティ。「BE THE _______ MAKERS.」をコンセプトに、「つくり手」自身の想いを実現させる事を共通目的とし、中目黒Pavilionを拠点したワークスペースの運用、会員限定のオンライメディア、コミュニティがビジネスの窓口となるCreative Jam Sessionの実施など、様々な施策を展開する。

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