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仕事を世に出せてこそプロデューサー 〜プロデューサーのトリセツ(前編)〜
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仕事を世に出せてこそプロデューサー 〜プロデューサーのトリセツ(前編)〜

様々な肩書の仕事人が生息するクリエイティブ業界。必ずしもよく知られていないその肩書の実態を、当人たちの喜怒哀楽から紐解いていくのが本企画「カタガキのトリセツ」。三回目の今回はプロデューサーの姿に迫る。

登場するのはプロデュースやプランニングを通じ広告ほか分野問わずものづくりを主導する株式会社米(こめ)の代表・ヤマナカユウスケさん、VTuberのライブや映像等オンライン配信を企画段階から担う株式会社CAMBR(キャンバー)代表・飯寄雄麻さん、ドライブインシアターを軸とした体験型コンテンツや地域開発を手がけるDo it Theater代表・伊藤大地さん(株式会社HATCH)の三名。 OPEN MIC編集長・新井哲郎によるファシリテーションのもと、トークは以下のように繰り広げられた。

仕事も意見も三者三様。でも根っこの部分で「わかる」

新井

じゃあ、始めますかね。今回のお題となる肩書は「プロデューサー」。一般的に、そもそも何をしている人なんだろう?と疑問がよく上がる仕事ではありますよね。活動領域もさまざまな皆さんですが、日頃どんな気持ちを抱えているか探らせていただきたく、早速「喜怒哀楽」の「喜」のパートから。一体どんなときに喜ばしい気持ちになるのかを、まず伊藤さんから教えてくださいますか。

伊藤

僕の場合は「日常と非日常」。このふたつを行き来している瞬間がものすごく喜ばしいと思ってます。分かりにくいと思うんですけど。

新井

早速、めちゃくちゃ哲学的ですね。

伊藤

僕は車から映画を観る「ドライブインシアター」を軸にイベントをつくったりしているわけですけど、実際の現場で、お客さんにとっての日常が非日常へシフトする瞬間がはっきり見えることがあるんです。典型的なのはデートで来てくれるカップルとか。誘う・誘われるというやりとりを交わす時点から非日常感は既に始まっているんでしょうけど、上映している時の車中で「アレはきっと、告白してる?」みたいに見える子とかを目撃することがあるんです。

新井

ワオ(笑)。

伊藤

そういう姿を図らずも目の当たりにして、こっちの方こそ重力がちょっと変わってしまう感じをもよおすものがあって。そんな経験がちょっと癖になってイベントをやり続けてるところは、ありますね。

ヤマナカ

それ、聞いてるだけでめちゃくちゃ素敵ですよ。

新井

なるほど。イベントそのものはおろか非日常を、特別な体験をプロデュースしているわけですね。じゃあ続いて飯寄さん、お願いします。

飯寄

この哲学的な話の後でなんですが「打ち上げ」って書いちゃいました(笑)。作品が公開されたときとか、ひとつの案件が無事終わったときとかにやる打ち上げ。

新井

……これはもう、誰も異論を挟まないでしょうね。

ヤマナカ

今、打ち上げしてるんだっていうことは、つまり。

飯寄

そうですね。目の前の光景を俯瞰で眺めることで「プロジェクトが、一応すべて無事に終わったんだな」と実感するっていう。途中で何か問題とかトラブルになったりしたら心置きなくみんなで打ち上げ出来ないわけで。ここまでのプロセスの途中ではメンバーのこんな成長が見られたよな、とかしみじみ思い出したりもして。

新井

やはりプロデューサーって、俯瞰でものを見るっていう視点というのがめっちゃあるんですね。単に打ち上げってところだけ聞けば「ただのパリピか?」と思いかけましたけど(笑)、違いましたね。そこにはちゃんと含みがありました。

飯寄

トラブルを察知して、みたいなことも自分自身がある意味ヒマというか心に余裕がないと対処することもできないんだろうなって。そう思うとプロデューサーってやっぱり大事なポジションなのかなと。

新井

まさしく、ですね。では次にヤマナカさん。

ヤマナカ

僕、プロデューサーという肩書こそ変わらずとも、色んなラベリングの下でやっている分、仕事の性質的にちょっと変化する部分があって。広告案件の場合とコンテンツ案件の場合とに分けて書いたんですけど……。「喜」でいうと、広告のときは「完了時」、逆にコンテンツのときは「開始時」だなと思っていて。

新井

なるほど、対照的ですね。

ヤマナカ

広告だと、マーケティング活動の一つとしてウェブサイトなり映像なりを作るというお題があり、それに沿って企画・制作すれば終わり。例外もありますが。もちろん、クライアント企業さんとしてはそこからが勝負なんですけれども、僕らの関わる領域としては、いったんそこで完了ですよね。チームを引っ張ってこれた、さらに企業さんの活動も予定通り無事スタートできてよかったよかった、という意味で。

新井

まさに先ほどの「打ち上げ」と同じ感じで。

ヤマナカ

そうです。一方コンテンツだと、ローンチするまでの期間と、開始してから続けていくこと、両面やることになりますよね。お金集めたりするのも時間かかるし。運営していくことがとにかく大変だし。なので一旦無事始まりの時を迎えたときは「おお、やっと始まった」とか「よし、ここからやったろう」みたいに一番気持ちが高ぶりますね。

伊藤

地道な努力を重ねてようやっと世に出るぞっていう。長い準備が報われたときの嬉しさ、わかりますね。

ヤマナカ

「来た!」「やっとか!」みたいな。ここからが大変だっていうのも分かってるだけに喜ばしさだけではないんですけど。

新井

なるほど、非常に面白いですね。一口にプロデューサーといっても、何をプロデュースするかによって、全然喜びポイントが違うんだ、という。

まだ東京で消耗したいんや、ワイは!

新井

じゃあ続いて「怒」の方に移りましょう。どんなときに怒り、感じますか?

飯寄

僕の場合は「クリエイターが軽視された」ときですね。ゼロからイチを作る難しさの中で、魂削って頑張ってくれたのにも関わらずないがしろにされてしまうと、とてもモヤっとしちゃいます。僕はもともと音楽が好きで、表現者側に興味を持ったんです。でも、ゼロイチを生み出すことが向いてないと感じて「だったら、裏方としてプロフェッショナルになればクリエイターと一緒にものづくりができるかもしれない」と早々に思い始め、今の道に進んだという経緯もあって。

ヤマナカ

めっちゃ分かります、それは。

飯寄

嬉しいです。なので、それだけにクリエイターが軽んじられる展開にはならないように、という意識が常に頭のどこかにあります。会社の他のメンバーもVJをやってたりモーショングラフィックスを作ってたりで、手を動かす大変さ・生みの苦しみを分かる人たちなので、みんなが同じ思いを持っていて。そんなわけで死守したい部分なんです。

新井

自分自身じゃなく、仲間やパートナーの領域に関して、そこを侵害され怒りを覚えるというのは非常にプロデューサー的というか。

飯寄

そうですね。僕自身に何されてもそんなに怒らないだろうなと。

新井

この業界、不思議とそういう人が多いんですよね。ただのドMなのかっていう説もあるんですけど(笑)。

飯寄

ないがしろにされたことでクリエイターが「もうやりたくない」となってしまうと、結局その人を取り巻く仕事全体が成り立たない。別のクリエイターがいるよ、という話をする人もいるのかもしれませんが、いや、それはちょっと違うんじゃないかなと思い、ここでは書かせてもらいました。

新井

こういう方がもっといっぱいいると、世の中確実に素敵になりますよね。

ヤマナカ

まさしくプロデューサーの言葉だって思いました。僕も会社始めたとき、ひとつのモチベーションとしてクリエイターとプロデューサーの双方の価値を底上げしていきたいというのがあって。つくるものが無形だと対価の基準もなくて、ゆえにその辺り、きちんと理解を持ち併せていない人が意図せずつくり手側をディスってしまったりもするから。

伊藤

あと他にも「業者」という呼び方に対する違和感とか、ありません? ちょっと「ん?」ってなるような。

ヤマナカ

言われた瞬間にもう多分その方とは付き合いたくないなと思ってしまうかもしれないですね......。作り手にリスペクトなさ過ぎじゃない?と思うようなシチュエーションも様々あって、その世界で生きていないと気付けないようなところは僕らプロデューサーがしっかり伝えないとな、と。

新井

じゃあその流れで次はヤマナカさん。

ヤマナカ

コンテンツも広告も両方「未熟さ」になりました。結局すべて自己責任というか。僕らの仲間が軽んじられたり感謝されなかったら、それは僕らの未熟さのせいだと。クリエイターが命を削って作ったものに対しての正しいプレゼンテーション、ラッピング、値付け等ができずに先方に届けてしまったからなんだと。プロフェッショナルになりきれてなかった自分の未熟さへのイラつき、ですかね……。

新井

なんてストイックな!

ヤマナカ

そうですかね。自分の責任だなって思わないと成長できないし、仲間も守れないんで。初めてやることだったりしてわからない点が多過ぎる場合とかは特になんですけど「なんで俺これできないんだろう」「なんで必要なコネクション持ってないんだろう」「なんであそこで声掛けられないんだろう」とか、よく思います。

飯寄

でもわかりますね。その、あくまで自分自身に原因を求めにいく感じ。大袈裟かもですけど、この東京で生きていくってそういうことなのかなって個人的に思わなくもないんですよ。タフなこの大都会砂漠で、みたいな一種の気概ですかね、これは。

伊藤

妙にデカい話出ましたね(笑)。

飯寄

『まだ東京で消耗してるの?』じゃなくて、むしろ「消耗したいんや」と。「まだ東京で消耗したいんや、ワイは!」みたいな感じは、ちょっとあるかもしれないです(笑)。

新井

(水を飲んでいて「ゲホッ」)ゴメンなさい。あまりにも変態過ぎてむせちゃいました。なに言ってるんですか!

ヤマナカ

フフ。でも共感します。

新井

じゃあ最後に伊藤さん。ふたりの怒りを聞いた上で、ご自身としてはどうですか。

伊藤

書くことがどうしても見当たらなくて「?」とだけ書いたんですけど、今の話を聞いてたら、どっちも確かに「そうだな」と。

新井

ないようで、やっぱりありました?

伊藤

でも、本格的な「怒」とまではいかないかもしれない。瞬間的にイラッとするかもですけど、クリエイターに対する目線とか抱く気持ちがどんなであるかは想像がつくので。こんな風に思考しているんだろうなって見えると、あんまり怒りにつながらなくて。

新井

手始めの「イラッと」は、ほぼ怒りです。

伊藤

そっか。なら、イラッとであれば、めっちゃありますよ(笑)。あと、なんと言うのかな、何か問題が発生してしまい、自ら矢面に立って面(つら)を汚されに向かう時の気持ちと隣り合わせの感情なのかな、とか思ったり。「一緒にやってくれている仲間のことを思うと、ここはちゃんと胸張らないと」っていう。

新井

ルフィみたいな発言。プロデューサーって友達にすると最高なやつですね。間違いなく。

飯寄

同じ意味合いで、僕も、プロデューサーからのトップダウンな感じを意識的に出さないように心掛けてます。いわゆるザ・プロデューサーなのか、それともクリエイター寄りのプロデューサーなのかによっても違ってくる話かもしれないですけどね。

新井

確かに。皆さんは「プロデューサー」と一言で括るにはあまりに幅が広過ぎる中で、俯瞰的な視点を持っているとか、チーム・仲間としての部分を大事にしてる姿は本当に共通していているんだなぁと。

ヤマナカ

そうですね。一人じゃ決してできないし、基本チームのみんなに助けられてるし。

飯寄

それに当然、クライアントとの関係性のことも見なくちゃいけないし。

新井

うんうん……。皆さん、ここまでありがとうございます。

ーーー
後編につづく

この記事の主役
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「つながり」をプロデュースする

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所属や肩書きにとらわれることなく、クライアントとクリエイターが肩を並べて協業ができる「つくり手」のための会員制クリエイティブコミュニティ。「BE THE _______ MAKERS.」をコンセプトに、「つくり手」自身の想いを実現させる事を共通目的とし、中目黒Pavilionを拠点したワークスペースの運用、会員限定のオンライメディア、コミュニティがビジネスの窓口となるCreative Jam Sessionの実施など、様々な施策を展開する。

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