OPEN FIRM発のメディアは、その名も『OPEN MIC』。編集長・新井は語る
クリエイティブワーカーのためのコミュニティ・OPEN FIRMがリニューアルを機にオウンドメディアを立ち上げる。『OPEN MIC』という名のそれは、当HP上の記事としてはもとより、音声プラットフォーム上のコンテンツとして、さらに映像プラットフォーム上やタブロイド型紙媒体といった多面的展開も見据え、各媒体にて順次リリースされる予定である。
この『OPEN MIC』の目指すところやその意義について、編集長の新井哲郎に、OPEN FIRMと関わるようになったいきさつ等も交えつつ話を聞いた。
OPEN FIRMのコンセプトメイカーとして
ーーOPEN FIRMのコミュニティとしての仕組みや構想づくりにも深く携わった新井さんですが、そもそもはどのようにしてこれに関わったのでしょうか。
ーー呼ばれた側からすれば面食らうというかなんというか(笑)。互いに頭を突き合わせる中で、構想等はどんな風にして作られていったんですか?
OPEN FIRMという以前からあったコワーキングスペースを、拡大・発展させたいというお題があって。各人それぞれの専門的見地からの意見も吸い上げつつ、検討を重ねていき、”BE THE ____ - MAKERS”の合言葉を作るまでには半年くらいの時間を要したのを憶えています。
僕は代理店で戦略を立案する仕事柄、かたやクリエイター、かたやクライアントという二者の橋渡しをするのが役回り。その経験から、ものづくりに関わるという一点で両者は本質的には変わらない、同じ者同士だという認識を常々持っていたこともあって、そういう問題意識もそこには反映されています。
受発注という構図に変にとらわれず、対等でフェアな関係性の中でこそ自由闊達なものづくりが実現できるはずで、OPEN FIRMがコミュニティとして健全に育っていく上でもやはりそこを担保する仕組みが欠かせないんだ、と。
クリエイティブの生を伝える『OPEN MIC』にご注目
ーー『OPEN MIC』というメディアを設けることになった理由とは? 名前もMIC、つまり歌などで手に握るあのマイクというのが何やら意味ありげですよね。
正直、僕自身メディアは必ずしも必要だと思ってはいませんでした。本間さんから「メディア、作りたいな」って言われたので「じゃあ作ってみようか?」と乗っかってみたんです。OPEN FIRM発のメディアなのだからそのコンセプトに則ったものにしようという考えもあった。コミュニティメンバー同士での共創を"CREATIVE JAM SESSION”と呼んでいるんですけど、ジャズバンドがセッションでソロ回しするみたいに、各人気ままにアウトプットできるようなメディアにしたい、という。
MIC(マイク)という例えのことなんですけど。この業界にはスポットライトを当てられていない人がまだまだ沢山いますよね。ごく限られた有名クリエイティブディレクターであるとか、業界全体で言えば0.1%以下に過ぎない人が繰り返し取り上げられてばかりで。でも業界のものづくりってその他99%以上の人たちの仕事があって初めて成り立っているわけで、だからこそマイクはオープンにしてあげて、その生の声を拾うべき、と考えていました。
世に出ていない良い企画っていっぱいありますからね。発案者のPCの中に眠っているだけの、承認され商品化されたら、絶対面白い企画。それがいろんな理由で頓挫したり捨てられたりしている。そういう場が『OPEN MIC』の場で日の目を見たり、CREATIVE JAM SESSIONを経て事業化されたり、といったことにつながればと思っています。
我こそはという人には積極的にマイクを渡し、主張してもらうことで、それがメッセージの受け手にも刺激となって「自分も人前に出て、マイクを持っていいんだ」となれば。そんな好循環をつくっていきたいです。
ーー『OPEN MIC』はスタート当初からWeb、音声コンテンツ、紙(タブロイド)、映像と複数のメディア展開を視野に入れているのがユニークですね。
そのあたりは、何か戦略的な理由があるというより、単に「やりたいからやっちゃおう」という位のものです(笑)。クリエイティブという営みは本来的に自由なものなんだから、ということでこの企画もまた自由気ままにやっていきたい。
電車移動時の読み物としても悪くないボリュームのWeb記事、気軽にながら聴きできる音声コンテンツ、特に視覚的に訴えたい場合は映像、という風にメディア特性も鑑み実験的に色々取り組んでいきます。実験ですから「うーんイマイチかも」と思えば途中でやめちゃうものだって、あるかもしれないんですけどね(笑)。
『OPEN MIC』が目指すもの
ーー単発のアウトプットを作っておしまい、ではなくて、より一貫性・継続性のある企画で媒体の展開を図るとのことですが、その意図するところは?
ものづくりに携わる人の、本当の生の声を伝えるメディアがまだ世に存在していない中、クリエイティブの現場で何が起こっているのかをちゃんと伝えるためには息の長い企画が必要だと思っています。
例えばCMの撮影スタジオ現場なら、照明のプロ、音声のプロ、美術のプロという具合に全部で四、五十人、時には百人規模のプロフェッショナルが、それぞれの想いなりやり甲斐なりを持って仕事に取り組んでいるわけです。でも当のクリエイター自身、幾度となく同じ現場に居合わせてはいても「あの人の仕事内容、実は今ひとつよくわかっていないんだよね」というのが実情です。
いろんな人のいろんな思いでひとつの現場が成り立っていると実感できれば、各人への感謝や敬意の念も湧いてきて、自分もそれに見合ういい仕事をしようという気持ちにおのずとなれると思うんです。
ーー3年後や5年後といった未来、『OPEN MIC』が一体どうなっていったらと考えますか。
メディアとしての存在感が大きくなっていって、電車とか街中で、ふとした時に媒体に接している姿を見かけてみたいですよね。「あれ? あの人、読んでくれてるぞ」みたいな。もしくは「『OPEN MIC』を見た(聴いた)ことがきっかけで、この仕事を志すようになりました」という人に遭遇するとか。そんなことが少しでもあればな…と思うばかりですね。
別件の仕事でご一緒する機会があったハッチの本間さんから、ふと「オフィスが手狭になったから新しい場所を探している」と教わったことがありました。
ほどなくして、今まさにオフライン上の交流スペースとなっているPavilionが使えるというラッキーな展開になり「こんないい空間なのだから、ぜひ何かしよう」ということで、議論して具体の部分を詰めるまでもなく、本間さんがその嗅覚のままに今のボードメンバー(スマイルズ、コネル、モーションギャラリー)、そして僕を呼び寄せたというのが実情です。